視力低下と将来の認知症リスクの関連性について

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加齢に伴って「老眼」や「かすみ目」など、視力の低下を感じる方は少なくありません。 
一見すると目と脳は無関係に思えるかもしれませんが、近年の研究では、視力低下と認知症の発症リスクに密接な関連があることが明らかになってきました。
国際的な医学誌『The Lancet』で2024年に発表された報告書(Livingston G, et al, 2024)(以下、Lancet報告書)では、「未治療の視力低下」が認知症の新たな「予防・修正可能な危険因子」として正式に位置づけられています。
つまり、目の不調を放置せず適切にケアすることが、将来的な脳の健康を守る「認知症予防」に直結する可能性が示されたのです。

この記事では、Lancet報告書で示された内容のうち、視力低下と認知症リスクの関わりがどういったものなのかについての概要を紹介いたします。

視力低下と認知症リスクの関連

視力の低下を放置することが、どの程度認知症のリスクを高めるのでしょうか。 
Lancet報告書において、研究開始時に認知機能が正常だった高齢者約620万人を追跡した、複数の研究をまとめた解析では、未治療の視力低下がある人は、そうでない方と比べて、認知症の発症リスクが1.47倍に高まるという解析結果が示されています1
また、目の疾患別に分析すると、白内障による視力低下で1.17倍糖尿病網膜症による視力低下で1.34倍、それぞれ認知症リスクの増加と関連していることも示されています2

なぜ視力低下が脳に悪影響を及ぼすのか?

視力低下が認知症の発症リスクとなる理由について、Lancet報告書では、主に以下の3つの可能性が指摘されています。

脳への刺激の低下

白内障の手術によって視力が回復すると、認知症リスクも低下するという研究結果3をもとに、見えにくくなること自体が脳への環境刺激を減らし、脳の機能低下をもたらす可能性が指摘されています。

基礎疾患の関与 

糖尿病網膜症による視力低下がある人は認知症リスクが高まることを示した研究結果4から、糖尿病による細かい血管へのダメージが、目と脳の両方に同時に悪影響を与えているサインとして、糖尿病などの基礎疾患が関与している可能性が指摘されています。 

神経細胞の共通ダメージ

視力低下の度合いが重くなるほど認知症リスクも段階的に高まることを示した研究結果5から、認知症の原因となる神経細胞の劣化といった危険な変化が、神経細胞の共通ダメージとして、脳だけでなく目の神経細胞(網膜)でも同時進行している可能性が指摘されています。

適切な目の治療は認知症リスク低減の可能性がある

適切な目の治療によって、認知症リスクを低減させる可能性も示されております。
Lancet報告書では、白内障の手術を受けた人は、受けなかった人に比べて認知症リスクが約29%低下したという研究6や、白内障の手術を受けた人は、目の不調がない健康な人と比べても、認知症リスクに差がなかった研究7が示されています。

認知症予防のために今からできること

「視力の低下は加齢のせい」と諦めてしまいがちですが、その多くは適切な予防や治療によって回避が可能です。
Lancet報告書でも、視力低下に対する治療は、推定90%の人にとって有効であり、費用対効果も高いことが強調されています8
つまり、自分に合ったメガネの作成や、定期的な眼科受診といった身近なケアが、将来の脳を守るための有効な手段となるのです。

また、視力ケアの重要性を考える上で、日本独自の環境にも注目すべきでしょう。
Lancet報告書によれば、世界における回避可能な視力低下の割合は約12.6%とされていますが8、日本国内の疫学調査9を基にした推計では、40歳以上の未治療の視力低下は約3.7%と世界的に見ても著しく低い水準にあります(Wasano & Jørgensen,  2025)。
これは、日本が世界屈指の医療アクセス環境にあり、目のケアが日常的に浸透していることを裏付けているものと思われます。

「最近、見えにくい」「目がかすむ」といった変化を感じたら、単なる年齢のせいだと放置せず、この恵まれた環境をぜひ最大限に活かしてください。 
適切なメガネの処方や眼科での治療を受けることは、単なる視力の改善にとどまらず、認知症予防に向けた確かな第一歩となるはずです。

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簡単チェックツールの特徴
  • 登録不要で、簡単なセルフチェック項目に回答するだけで、1~5年後の認知症発症リスクを可視化することができます
  • 東京都健康長寿医療センター研究所が実施した過去の調査データに基づいて作成したもので、65~85歳の方(認知症の診断を受けていない方)を主な対象としています。

こちらのツールは、医学的な診断を行うものではありませんが、現状のリスクを知り、日々の生活習慣を見直すきっかけとして役立つツールとなります。
※入力された情報が保存されることは一切ありませんので、安心してご利用ください。

下記のリンクよりご利用いただけます。

主な参考文献

  • Livingston G, et al. Dementia prevention, intervention, and care: 2024 report of the Lancet standing Commission. The Lancet, 2024.
  • Wasano K, Jørgensen K. The potential for dementia prevention in Japan: a population attributable fraction calculation for 14 modifiable risk factors and estimates of the impact of risk factor reductions. The Lancet Regional Health – Western Pacific, 2025.
『The Lancet』報告書(2024)・Wasano &Jørgensen(2025)で論拠として示された文献
  1. Shang X, et al. The association between vision impairment and incidence of dementia and cognitive impairment: a systematic review and meta-analysis. (2025)Ophthalmology, 2021.  ↩︎
  2. Kuźma E, et al. Visual impairment, eye diseases, and dementia risk: a systematic review and meta-analysis. J Alzheimers Dis, 2021. ↩︎
  3. Lee CS, et al. Association between cataract extraction and development of dementia. JAMA Intern Med, 2022. ↩︎
  4. Lee CS, et al. Diabetic retinopathy and dementia association, beyond diabetes severity. Am J Ophthalmol, 2023. ↩︎
  5. Paik JS, et al. Low vision and the risk of dementia: a nationwide population-based cohort study. Sci Rep, 2020. ↩︎
  6. Lee CS, et al. Association between cataract extraction and development of dementia. JAMA Intern Med, 2022. ↩︎
  7. Ma LZ, et al. Cataract, cataract surgery, and risk of incident dementia: a prospective cohort study of 300,823 participants. Biol Psychiatry, 2023. ↩︎
  8. Blindness and Vision Impairment Collaborators. Causes of blindness and vision impairment in 2020 and trends over 30 years, and prevalence of avoidable blindness in relation to VISION 2020: the Right to Sight: an analysis for the Global Burden of Disease Study. Lancet Glob Health, 2021. ↩︎
  9. Yamada M, Hiratsuka Y, Roberts CB, et al. Prevalence of visual impairment in the adult Japanese population by cause and severity and future projections. Ophthalmic Epidemiol, 2010; 17(1): 50–57. ↩︎